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ETICがGLI第四回上海ネットワーカーサロンに参加

2007年1月21日午前、GLIは日本・東京から訪中した社会起業家のインキューベーション組織であるETICを迎えて、上海・南京東路の地区活動センターにて第4回のネットワーカーサロンを開催した。ETICフェローの広石拓司さんと、事務局長の鈴木敦子さんがGLIの招待に応じて参加し、素晴らしい発表を行って下さった。

今回の参加者は合計22名で、上海の17名のネットワーカーと、上海に仕事や留学の為に滞在している5名の日本の方の参加があった。中国側の参加者はETICとGLIの今後の更なる協力関係の為に多くの提言を行った。現場でのアンケート調査によれば、95%の参加者が、今回の活動は非常に意義があり、かつ参考価値のあるものであると評価した。

以下は今回の活動の記録である。

まず、GLIの事務局長、李凡からGLIの紹介があり、参加者の自己紹介があった。

広石:ETICの活動の趣旨は若い世代の社会起業家を発掘し、育て、サポートすることにあります。ETICは1993年からこの趣旨に基づいて、様々な活動を展開してきました。当時の日本は大企業主導の社会であり、鈴木さんのような若い大学生が起業について強い関心を持っていた時代でした。1996年から、「アントレプレナー・インターンシッププログラム」を立ち上げました。このプログラムは、在学中の大学生に、ベンチャー企業での3ヶ月から6ヶ月の実践機会を提供するものです。この過程に於いて、起業は徐々に社会性を持つようになり、最後には、若者の間で社会起業という定義が行われるようになったのです。

また、私たちのもう一つのプログラムには、社会的な課題に事業的手法で挑戦する若者のためのビジネスプラン・コンペティションがあります。社会的企業を立ち上げようとする学生から、5-6人をファイナリストとして選抜し、ビジネスプランのブラッシュアップとサポートを行うというものです。このプログラムに過去に参加した学生の中には、すでに起業に成功したものもあり、そこでは新しい卒業生を採用しています。2004年からは、「チャレンジ・コミュニティ」プロジェクトを開始、東京以外の地方で社会起業を志望する若者に、プラットフォームを提供しています。

これらの活動をまとめると次のようになります。若者に社会起業について理解する機会を提供し、自分で考えて、アイデアを生み出してもらう。これらの若者がプランを実現するサポートを行い、起業の手助けをする。そして、次の世代のインターンに、この新しく生まれた社会的企業で働いてもらう。このように、一種のポジティブ・サイクルが形成されていると言えるでしょう。

次に、いくつかのケースをご紹介します。

村田さんという一人の女の子が2001年にカンボジアに行き、現地の女の子が、貧困の為に売春や他の好ましくない方法でお金を稼いでいる事を知り、社会企業がこれらの女の子の為に、職業訓練ができるのではと思い立ちました。彼女は2004年にパソコンスクールを設立、現在では100名の現地の女の子がIT知識のトレーニングを受けています。村田さんは日本で受けた注文を徐々にカンボジアの訓練生に任せています。彼女は当初資金もなく、一つのアイデアを持っていただけですが、経験豊富な専門家やETICのサポートの下、そのアイデアを実現させました。

秋葉さんは農家の出身で、村民の所得が低いのは農産品の販売チャネルが単一の為で、インターネットを使えば、村民がより多くの所得が得られる事に気づきました。例えば有機農法で作ったお米は、一般的なチャネルでは販売が難しいですが、インターネットを使えば、環境保護に配慮した農業を必要に応じて広めることができます。ETICは一つ一つのプロジェクトに、その分野での専門家であるメンターを派遣します。

KOMPOSITIONもまた、ETICのサポートの下に設立されたNPOです。若者の壁への落書は社会問題になり得ますが、中には芸術的な才能を持つものもいます。KOMPOSITIONは落書きの為の場所を準備することで、これらの若者の才能を活かし、同時に社会環境を保護することができます。

最後のNPOの例は、引きこもりの子供の為に設立されたものです。彼らは、これらの子供が小説に親しんでいることに気づき、子供たちに対してクリエイティブ・ライティングの教室を開きました。創作能力に優れた子供は、ウェブサイトに文章を提供する仕事をすることができ、これは彼らの社会参加の助けにもなります。

これらのケースは、ETICがサポートしている、まだ発展途上なプロジェクトですが、これから比較的成熟したプロジェクトについてのビデオをお見せします。このプロジェクトは、風邪を引いたときに幼稚園に行けず、家にも面倒を見てくれる人がいない共働き家庭の子供を、コミュニティの退職した看護婦や、育児経験のある母親が面倒を見るというものです。このアイデアが実現するまでには、約半年の時間が必要でした。現在日本では、多くの都市がこのモデルを採用し始めています。

次に、ソーシャルベンチャー・コンペティションの流れを説明します。私たちは、毎年約200の申し込みを受け、その中から20人と面接を行い、さらに5-6個のアイデアを選出して集中的なサポートを行います。ETICは成立して13年になりますが、プロジェクトの対象はすべて若者を中心にしています。
 
もう一つ、比較的成熟したケースをご紹介します。ETICは1冊の本を出版しました。その中には32のケースが紹介されており、ETICについて理解したい、あるいはETICに参加したい若者はこれをモデルとすることができます。

徳島県上勝村は2000人の住民からなる高齢化が進む村ですが、創立者は社会福祉の概念を変え、高齢者が継続的に仕事に従事することを呼びかけ、村の特産品である葉を料理の飾りとして生産することで、高齢者に就業機会を与えています。その結果、葉を使った装飾物は高級レストランで歓迎を受け、生産者も自信を持てるようになりました。創立者は生産者をレストランに連れて行き、自分の商品がどのように役に立つか理解してもらい、またパソコンのトレーニングを行うことで、生産者が社会の発展についていけるように努力しています。

もう一つのケースは高知県土佐村にある、苺農家の例です。苺は腐りやすい果物ですが、その鮮度を保つために、8名の主婦が都市部の調理師に教えを請い、苺ケーキの作り方を学びました。この美味しいケーキは、現在、毎年500万円の売上をもたらしています。

また、本来は民間の経営だったスキー場が経営不振のために閉鎖され放置されていたところ、創立者がこれをコミュニティの活動センターへと改造、優待チケットを発行し、その後多くの地元市民が訪れるようになったケースもあります。もう一つのケースは、これまで一部の参加者に限られていた環境保護運動を広めるために、子供に環境保護活動に参加してもらい、子供の周りにいる大人に環境保護意識を広めてもらうというものです。これらのプロジェクトは、どれも明確な社会目標を持っています。

質疑応答
 
任(賽扶中国):中国では、多くの若者が大学卒業後、大企業に勤めたいと思っている。たとえば、山間部の子どもたちは、小さい頃から故郷を出たいと思っており、自分の努力で出て行ったあとは、二度ともどらない。どうしたら、このような人を地元のコミュニティに引き付け、その発展に寄与するよう仕向けられるだろうか?
 
広石:日本でも、主流派の流れは中国と同じで、いい学校に入り、大企業に勤めることを希望する人は多いです。しかし大企業に入った後で、この仕事を一生続けるのか、これが本当に自分のしたいことなのか自問し、自分もコミュニティの役に立ちたい、いろんな人と付き合いたいと考え始める若者も少なくない。ETICの役目は、彼らに一つのモデルを提供することです。たとえば、退職した看護婦と経験豊富な主婦による病児保育の組織には、日本で二番目の大手銀行の内定を辞退した人がいます。収入は銀行時代の5分の1になってしまいましたが、彼女はこの組織の将来性にかけた訳です。また、ETICはビジネス経験豊富な人を招き、若者がビジネスへの理解を深め、自分のやりたいことを理解することへのコンサルタントを行っています。収入はビジネスをするよりずっと少ないけれど、ますます多くの若者がNPOやNGOに加わるようになっています。
 
鈴木:私たちは、インターンシップ・プロジェクトで、学生を小型のソーシャルベンチャーやNPO・NGOに実習に行かせます。学生たちは卒業後、大企業に就職する人もいますが、NPOやNGOに就職したり、自分で起業する人もいます。彼らは自分がそういう組織により向いていると考えているからです。
 
Nancy(上海児童探索館):ETICの財政状況を紹介してください。政府の援助と個人的援助の割合などはどうですか。
 
広石:ETICはNPO法人です。日本の大多数のNPOは年間予算65万人民元、3分の1は、中型組織で年間予算は65-325万人民元。ETICの規模はやや大きくて年間予算は1000万人民元です。その内の50%は政府から、30%がインターンシップ。プログラムの収入、20%が財団や企業からの賛助金です。総じて言えば、日本のNPO組織はみな小さく、3-5名の専任職員とボランティアやパートによって支えられているのがほとんどです。もちろん、一般的に勤労者はみな高収入を望みますが、若者は、大きな発展の余地があり、時間を自己の成長のために投資したいと思っているため、NPOに就職したいという若者も多いのです。この業界は成長し、この分野で働く人の収入も増えていき、企業と比べても遜色ない程になると信じています。ETICの職員の多くも大きな情熱をもって大企業から転職して来ており、単なる転職とは違います。
 
李(南京大学):私はNPOの自己啓発システムについてお話したいと思います。私たちの社会には、援助者が人を援助するとき、受益者に報酬を要求することがあります。私は、公益事業に関わる人は二種類に分けられると思います。一つは資金援助を受けたことがある人。彼らは援助を受けたからこそ、他人を助けたいと思います。もう一つはボランティア活動に参加することで経験を得たい人。彼らは興味のあるプロジェクトには参加してくれます。現代社会は、主に経済価値で、人を評価しますが、今後は総合的な価値で評価するようになるでしょう。公益事業とは、すべての若者をみなNPOに参加させることではありません。彼らが日常生活や仕事上で、社会に貢献することを啓発することです。
 
広石:大変意義深いお話です。社会企業家あるいは社会企業家を養成する組織の目標は、自信を持ち、外部の観念にとらわれない若者を育てることです。社会企業に必要なのは、多様な人に、多様な仕事をしてもらうことであり、みなが同じことをするのではありません。私たちも、多くの小さい企業が一斉に同じことをして失敗するのを見てきました。社会企業も同じ問題が起こり得ます。
 
朱征(GLI):ETICで一連のプロジェクトを行うとき、いつもどんな問題や困難がありますか?またどのように解決しますか?
 
広石: 私たちのプロジェクトに参加する人にはふたつのタイプがあります。一つはビジネス部門から来た人で、ビジネスセンスに溢れ、往々にして比較的せっかちで効率を重んじます。もう一つのタイプは、NGOやNPOでずっと仕事をしてきた人で、問題を深く考えすぎ、何事も多方面にじっくり考え勝ちで、決定が遅れてしまいます。両者の間には、矛盾が存在します。また私たちの仲間には多方面の専門家がおり、考え方もちがうので、まったく相反する提案をすることもあります。そこで、私たちは、彼らが自分の「北極星」つまり目標を定めるよう提案します。問題を問題として、理解すればするほど問題が解決できなくなる恐れがありますので、一歩引いて客観的に問題を眺め、袋小路に入らないように注意する必要があります。違う角度から見れば、これはひとつのチャンスかもしれません。
 
王(淮海地区):社会企業は企業とも政府とも違う組織として、どのように政府の興味を引き、そのサービスを購入してもらうようにできるのか?
 
広石:この問題に関しては、イギリスの社会企業プロジェクトである、Bromley-by-Bow地区センターの例を参考にすることができます。
 
李凡:GLIの中国語サイトから『社会企業家の台頭』がダウンロードできます。最初の事例を参考にしてください。
 
Jeson(熱愛家園):広石さんに、ネットを利用して農産物を広めたという事例をもっと詳しく紹介していただきたいです。私の友人もネットを利用して米を売っていますが、経営状態は良くないです。
 
広石:我々のプロジェクトも、はじめは順調には行かず、専門家の助言を求めました。まずは、自分たちの考え方を理解してくれる人を探し出すのが大事だと思います。彼らからはじめて、徐々にその輪を広げるのです。NPOはいつも自分たちは社会全体にとっていいことをしていると考えているので、往々にして、相手の需要を軽視しがちです。社会企業がしなくてはならないことは、その両方の人たちを繋ぐことです。

(記録整理:朱征)
 
(翻訳者: 伊藤 健、松江直子)

 

作者:  松江 |  ニュース GLI関連 |  01 March 2007 |  00:00