
| 2007年5月26-28日、浙江大学管理学院グローバル創業センター、オックスフォード 大学スコールセンター、アジア起業家学院(Entrepreneurs School of Asia)が共催する「ソーシャル・エンタープライズ国際フォーラム」が杭州で開催され、社会的起業、CSR、非営利組織の起業管理などのテーマをめぐり、ディスカッションと交流が行われた。
主催者のひとつである、オックスフォード大学SAIDビジネススクールのスコール社会的起業研究センターは、有名なe-bayの創始者Jeff Skollの名を冠する基金会が賛助して創設された。センターは社会企業と社会起業家精神研究で世界のトップを走る学術機構となることを目指している。世界中の先進的な理論と実証研究を統合することを通じて社会起業家の発展を促し、社会に真の変化をもたらすために世界の社会的リスク投資を支持・推進している。 今回のフォーラムは、中国ではじめて行われた社会企業とソーシャルイノベーションに関するフォーラムであり、14の国と地域、中国の17の省と市からの200人あまりの専門家、学者、起業家、組織代表、およびMBA生が出席した。浙江省人民政府副省長・金徳水、浙江大学校長・楊衛、オックスフォード大学SAIDビジネススクールスコル社会企業研究センター主任・Rowena Youngj女史、アジア起業家学院学院長・Vivienne Tan女史が、開幕式で歓迎の言葉を述べた。 GLIの推薦と連絡の下、日本の社会起業家インキュベーション組織ETICの佐々木健介氏と、SVP東京メンバーでGLIネットワーカーの伊藤健氏は、招かれて出席した。 以下、簡単に本フォーラムのなかから、ソーシャルイノベーションの実践者の発言をお伝えする。 【フィリピン】アジア起業家学院院長・Vivian Tan:グローバル化を背景とした社会的起業 Tan女史が考える社会企業とは、利益をあげながら、社会のために新たな価値を創造する企業である。フィリピンは、依然として多くのスラムを抱える発展途上国であるが、社会企業は貧困に対抗する効果的な道筋である。Tan女史が創設したアジア起業家学院は、マイクロクレジットを通じて起業した人々(マイクロ・アントレプレナー)を支援している。そういう人々は往々にして都市の貧困層であるが、彼らは政府の資金を得ても、どのようにその資金を使えばいいのかわかっていないので、学院は彼らに講座や研修などを提供している。最近、学院はAIESECと協力し、高校生に社会企業の理念を広めた。目下かれらは20校からの200名に上る高校生に対して研修を行い、グループごとに一名の創業学院の先生または学生を配置して、若者たちに自分たちの技能と力だけで一つの貧困地区を変えられるということを学ばせる。彼らの目標は、2007年に200箇所のコミュニティ、2008年には2000箇所のコミュニティを支援することである。Tan女史は最後に、社会企業には多くの内容があって、はっきり定義することは難しいが、それは、生活の中で最も美しいことであるのは確かだ、と語った。 Gawad Kalinga事務局長・Luis Oquinena: 全国民を動員して貧困に対処する Luis Oquinena氏が所属するGawad Kalingaは、フィリピンで貧困問題に取り組む最大のNGOである。その目標は、スラム・物乞い・飢えた者のないフィリピンを造る、ということだ。ここ数年、Gawad Kalingaはフィリピンで最も貧しい25のコミュニティに住む人々に、自分たちの力で新しい生活を獲得できることを示してきた。Gawad Kalingaは、一連のコミュニティ発展行動を通じ、コミュニティ住人の自尊心を再建する。例えば、家庭菜園プロジェクトでは、住民たちに家の庭に穀物を植えて 自給自足し、ひもじい思いをしないように援助・激励する。就職研修プロジェクトで は、人々の潜在能力を発見・育成し、コミュニティ管理員・警備員・調理師などコミュニティ内での就職機会を提供する。Gawad Kalingaは、高級住宅地より質の高いコミュニティの創出に尽力してきた。目下、コミュニティには、美しい野菜畑、たわわに実った果樹があるばかりか、コミュニティ内の商店やレストランも相当の市場競争力を具えるようになり、かつてのスラムは次第にと観光地に変わりつつある。Gawad Kalingaモデルは、すでに他のコミュニティにとってのお手本となっている。 【韓国】ソウル大学・Dongsung Cho:韓国のCSR実践 韓国では、商業利潤と社会利益は相互補完関係である、という認識が多くの企業に深まりつつある。しかし、目下国際スタンダードが高いために、少数の大型企業のみが実行可能であり、多くの中小企業はしり込みしている状態である。Cho教授は、企業のビジネス、CSR、環境保護という三種類の報告書を、一冊の持続可能化発展報告にまとめ、それを5段階に格付けした。段階ごとに要求レベルは上がり、例えば、レベル1では企業は何をしているか、という報告だけでよいが、レベル5になると、企業 の業績、社会的名声、市場戦略価値など多くのデータが要求される。企業が複数のレベルから自社の規模と実力に相応しいレベルを選んで報告するこのしくみは、より多 くの企業がCSR実践活動に参与するために役立っている。現在、韓国では、31社がこ の持続可能化発展報告を発行している。このほか、Cho教授は2003年3月から、毎月1回の「ベストプラクティスフォーラム」を開催し、CSR管理と実践についてディス カッションを行っている。三ヵ月毎に行う「ベストCEOクラブ」では、CEOたちと企業 の道徳管理について話し合っている。 【中国】北京光華慈善基金会総裁Henry To:中国社会型起業実践 北京光華慈善基金会は2005年に登録した非公募型基金会である。To氏は発言中、彼らの趣旨は「魚を与えるのではなく魚の捕らえ方を教える」ことであり、人が尊厳を持って発展し、発展の中で貢献する気持ちを呼び起こすことであると繰り返し強調した。彼らの公益プロジェクトは、教育に着目している。たとえば、困窮高校生に奨学金を提供するプロジェクトでは、2006年の累計で、20箇所の貧困地域の100校の高校に通う1000名の学生に100万人民元の奨学金を提供した。村の英語教師研修計画では、2006年は12の省・自治区の134名の英語教師に研修を行った。大学生のキャパシティ・ビルディングプロジェクトでは、貧困地域の学校と関連公益機関に効果的なボランティア資源を提供し、主に大学生が持続可能な教育支援活動を展開するための援助をしている。現在、光華は公益的起業の研修に力をいれており、ドラッカーが開発したNGO戦略管理研修の普及を通じ、NGOの管理効率を上げ、若者や大学生の起業を支援する。 浙江万事利集団総裁・李建華:浙江民営企業のCSRと発展機会 浙江万事利集団は浙江省の有名企業で、主力製品であるシルクは、約80%が欧米に輸出されている。李建華氏によると、5年前は、欧米が求める企業の環境・CSRなどの認証基準に達しないために、シルクの輸出に様々な問題が起こったが、いまでは、環境保護を強化し公益医院を建設するなど、万事利集団はCSRを重視しており、企業目標を生産中心から人間中心に変えた。ついには欧米のサプライヤーに対する多くのCSR認証を獲得し、中国初のCSR年度報告書を発行する民間企業となった。 万事利集団の最新のCSR計画は、100あまりのサプライヤーCSRの国際認証を獲得することである。今のところ、この国際スタンダードを獲得した中国企業はまだ存在しない。はじめは、CSRという概念は企業の管理層やスタッフに理解されなかったが、5年来の結論は、CSRは当集団により多くの経済的利益と社会的名声および国際的チャンスをもたらしてくれた。 このフォーラムでは、社会起業家や社会責任実践者からの発言は多くなかったが、それでも社会的起業の典型のいくつかを提示してくれた。会場には、香港社会発展フォーラム(HKCSS)などの優秀な社会企業実践者の姿も見られた。HKCSSは、香港の社会企業に交流と研修のプラットフォームを提供し、目下100あまりの社会企業が会員となっている。彼らが出版した『2007年香港社会企業サービスガイド』には、これら社会企業の詳細な業務分類・サービス地域・連絡先が掲載され、香港市民に社会企業のサービス情報を提供している。このほか、HKCSSと香港中文大学、香港城市大学、香港特別行政区貧困援助委員会などの高等教育機関、政府部門は、共同で社聯学院を開設し、NGO研修や社会企業の起業研修を行っており、研修終了後は、社会起業家認証証明書を発行している。 今回のフォーラムは、中国国内と海外の社会企業実践者に交流のプラットフォームを提供した。海外の専門家や実践者と比べて、この会議に参加した中国の社会企業実践者はあまりに少なく、残念を言わざるを得ない。中国の社会企業は未だ模索段階で、理論・実践ともに乏しいが、海外の社会企業が我々に提供してくれたベストプラクティスや彼らの経験は、中国の社会企業の成長に役立つことになろう。 文責:朱征 翻訳:松江直子 |
作者: 松江更新 | GLI関連ニュース | 13 June 2007 | 00:00